「壊す」と「崩す」は、どちらも「元の状態ではなくなる」ことを表す言葉ですが、いざ自分で文章にするとき、「どっちを使えばいいんだろう?」と手が止まってしまうことはないでしょうか。
おもちゃや家電、積み木や雪だるま、体調や生活リズム、人間関係や予定など、身の回りのいろいろな場面で出てくる言葉だからこそ、なんとなく感覚で使っていて、自信が持てないまま…という方も多いと思います。
この記事では、「壊す」と「崩す」の基本的な意味の違いから、物・体調・人間関係・お金や予定など、具体的な場面ごとの使い分けまでを整理しました。
壊すと崩すはどう違う?意味の違いと基本イメージ
「壊す」と「崩す」は、どちらも「元の状態ではなくなる」ことを表す言葉です。ここではまず、それぞれの基本的な意味とイメージをやさしく整理していきます。
「壊す」の意味とイメージ|機能や形をダメにする感じ
「壊す」は、もともときちんと動いていたものや、形がしっかりしていたものを「使えない状態」「元には戻しにくい状態」にしてしまうときに使われることが多い言葉です。
たとえば、次のような場面でよく使われます。
- スマホを落として壊してしまった
- 子どもがおもちゃを壊してしまった
- 強くぶつけて眼鏡を壊してしまった
これらの例では、「前と同じように使えなくなった」という共通点があります。
物の中にあるしくみや機能が傷んでしまって、「直さないと使えない」「もしかしたらもう使えないかもしれない」という状態をイメージしやすいと思います。
また、「壊す」には、よい状態だったものに大きなダメージを与えてしまった、という少し強めの響きもあります。
「ちょっと調子が悪くなった」程度ではなく、「かなり悪くなってしまった」という印象が出やすい言葉だと考えておくと、イメージがつかみやすくなります。
「崩す」の意味とイメージ|整った形やバランスを崩す感じ
「崩す」は、きれいに積み上がっていたり、バランスよく整っていたりするものの形をくずしてしまうときに使われることが多い言葉です。
次のような場面を思い浮かべてみてください。
- 積み木の塔を崩す
- 雪だるまを崩す
- お皿に盛ったケーキが崩れてしまった
どれも、「元の形」はなくなってしまいますが、中身そのものが使えなくなったわけではありません。積み木はまた積み直せますし、ケーキも崩れてしまっても食べることはできます。
このように、「崩す」は「形やまとまりをくずす」「きれいに整っていた状態をバラバラにする」というイメージを持っています。
物の中身をダメにするというより、「見た目」や「バランス」が変わる場面でよく使われる言葉だと考えると分かりやすくなります。
一言で覚える壊すと崩すの違い|ダメにするか・かたちを変えるか
ここまでの違いを、ひとことでまとめると次のように整理できます。
- 壊す=中身や機能をダメにしてしまう
- 崩す=整ったかたちやバランスをくずしてしまう
スマホや家電のように「動くこと」「働くこと」が大事なものは「壊す」、積み木や山、盛りつけた料理のように「形」や「積み重ね」がポイントになるものは「崩す」、というふうに考えるとイメージがつかみやすくなります。
この基本イメージを頭のすみに置いておくと、物だけでなく、体調や生活リズム、人間関係、お金や予定など、いろいろな場面での使い分けもスムーズに考えられるようになります。
壊すと崩すの使い分け①|物や建物など形のあるもの
ここからは、具体的な場面ごとに「壊す」と「崩す」の使い分けを見ていきます。
おもちゃ・機械・家電での「壊す」の使い方と例文
おもちゃや機械、家電など、スイッチを入れると動いたり、決まった役割を果たしたりするものには、「壊す」がよく使われます。
- スマホを水の中に落として壊してしまった
- ゲーム機を落として壊してしまい、電源が入らなくなった
- 掃除機を乱暴に扱って壊してしまった
こうした場面では、「もともとできていたことができなくなった」「直さないと使えない」という状態になっています。
「壊す」は、そういった「機能が失われる」「本来の働きができなくなる」イメージが強い言葉です。
家や家具、自転車のように、少し大きめの物でも同じです。
- 長年使ってきた棚が壊れてしまった
- 自転車を倒してしまい、ライトが壊れてしまった
この場合も、「元のようには使えない」「安全に使うためには大きな修理が必要」という印象が伝わります。
単に形が変わっただけではなく、「役目を果たせない状態」になっていることがポイントです。
山や壁・積み木での「崩す」の使い方と例文
一方で、「積み上がっていること」「形が整っていること」が大事なものには、「崩す」がよく使われます。
- 子どもが高く積んだ積み木の塔を崩す
- 雪だるまを崩して、別の形に作り直す
- 古くなった塀を崩して、新しい塀に作りかえる
これらの例では、確かに元の形はなくなっていますが、材料そのものはまだ使えます。
積み木はもう一度積めますし、雪だるまを崩しても雪そのものが消えるわけではありません。
自然の中や日常の場面でも、「崩す」「崩れる」という表現はよく使われます。
- 庭に積み上げておいた落ち葉の山が崩れてしまった
- 重ねておいたダンボール箱の山が崩れてしまった
「積み重なって形を保っていること」が大事なものは、その形がばらばらになったときに、「壊れる」より「崩れる」「崩す」という言葉がよく使われます。
「壊れる」と「崩れる」の違いも合わせてチェック
「壊す」と「崩す」は、自然に変化するときの言い方「壊れる」「崩れる」ともセットで考えると整理しやすくなります。
- スマホが壊れた
- 時計が壊れた
- おもちゃが壊れた
というときは、「中のしくみがおかしくなって、前のように使えない」というイメージです。一方で、
- 積み木が崩れた
- プリンが崩れた
- 山の斜面が崩れた
というときは、「形やバランスがくずれてしまった」というイメージが強くなります。
この違いをざっくりまとめると、
- 壊れる(壊す)=しくみや機能がダメになる
- 崩れる(崩す)=形や積み重ね、バランスがダメになる
と覚えておくと、そのあとに出てくる体調や人間関係、お金や予定の話にもつなげやすくなります。
壊すと崩すの使い分け②|体調・生活リズム・人間関係
次に、「体調」や「生活リズム」「人間関係」のように、目には見えないけれど、私たちの暮らしに深く関わっているものをテーマに、壊すと崩すの使い分けを見ていきます。ここは、実際によく迷いやすい部分でもあります。
「体調を崩す」がよく使われる理由と自然な言い方
日常会話やニュースなどでも、「体調を崩す」という言い方はとてもよく耳にします。
- 季節の変わり目で体調を崩してしまった
- 忙しさが続いて、体調を崩しがちだ
このときの「体調」は、からだ全体のバランスを指しています。
睡眠、食事、ストレスなど、いろいろな要素が組み合わさって「体調」が成り立っている、というイメージがあるため、そのバランスが乱れたときに「崩す」という言葉がぴったり合うのです。
一方で、「体調を壊す」という言い方もないわけではありませんが、少し大げさに聞こえたり、深刻な状態を想像させたりすることがあります。
日常的な会話や、ちょっとした体調不良について話すときは、「体調を崩す」を基本にしておくと、やわらかく自然な印象になります。
また、相手の体調を気づかうときには、
- ご無理をなさらず、どうか体調を崩されませんように
- 最近お忙しそうですが、体調など崩されていませんか
といった、ていねいな言い方もよく使われます。どれも、「バランスが乱れないように気をつけてくださいね」というやさしい気持ちを含んだ表現です。
「体を壊す」「生活リズムを崩す」のニュアンスの違い
似た表現として、「体を壊す」という言い方もあります。
- 無理をしすぎて体を壊してしまった
- 休みなく働き続けて、体を壊してしまった
「体を壊す」は、「体調を崩す」よりも重いイメージの言葉です。少し疲れている、というよりは、無理が重なって大きく健康を害してしまった、というニュアンスが含まれやすくなります。
気軽な会話で使うと、聞き手に深刻な印象を与えることもあるので、場面に合わせて使い分けるとよさそうです。
一方、「生活リズムを崩す」という言い方もよく使われます。
- 夜ふかし続きで生活リズムを崩してしまった
- 長い休みのあいだに、すっかり生活リズムが崩れてしまった
ここでは、「規則正しく整っていたリズムが乱れてしまった」「バランスよく回っていた一日の流れがくずれてしまった」というイメージです。
生活そのものがダメになったというより、整っていた形が崩れた、という感覚に近いので、「壊す」より「崩す」が向いていると言えます。
信頼関係を壊す・関係が崩れるときの言い方のポイント
人間関係や信頼関係にも、「壊す」「崩す」という言葉が使われることがあります。
- 何気ない一言が、長年築いてきた信頼関係を壊してしまうこともある
- 小さなすれ違いが積み重なって、少しずつ関係が崩れていった
「信頼関係を壊す」は、「取り返しがつかないほど大きな傷をつけてしまう」という強めの表現です。
長く時間をかけて築いてきた関係を、自分の行動によって台なしにしてしまう、というイメージが含まれます。
一方、「関係が崩れる」は、時間をかけて少しずつバランスが悪くなっていくイメージに近く、「前のような心地よさがなくなってしまう」というニュアンスを含みます。
ビジネスの場面や、公の文書では、「壊す」はかなり強く聞こえる場合もあります。そのため、
- 信頼関係が損なわれてしまう
- 良好な関係に影響が出てしまう
といった、もう少し中立的で落ち着いた表現に言いかえることもよくあります。状況の重さや、相手との距離感を考えながら、言い方を選ぶのが安心です。
壊すと崩すの使い分け③|お金・予定・ルールなど形のないもの
続いて、「お金」「予定」「ルール」のように、手で触れることはできないけれど、私たちの生活を支えているものに対しての「壊す」「崩す」の使い分けを見ていきます。
「貯金を切り崩す」などお金まわりでの「崩す」の使い方
お金に関する表現では、「崩す」「切り崩す」という言い方がよく使われます。
- 貯金を切り崩して生活費にあてる
- ボーナス分を少し崩して、急な出費にあてた
ここでは、積み上げてきたお金を、少しずつ取り崩して使うイメージがあります。「壊す」とは違って、お金そのものが使えなくなるわけではなく、「まとまっていたものをくずして使う」「長く温めていたものを取り出して使う」といった感覚に近い表現です。
また、細かいお金にするという意味で「お札を崩す」という言い方もあります。
一万円札を崩してもらって、細かいお金にした
この場合も、「壊す」ではなく「崩す」が使われます。
お金の価値がなくなったわけではなく、形が変わって使いやすくなった、というニュアンスだからです。
予定や計画が「崩れる」ときの言い方と例文
予定や計画についても、「崩れる」「崩す」という表現が自然です。
- 急な来客が入り、今日のスケジュールが崩れてしまった
- トラブルが続いて、当初の計画が崩れつつある
ここでのイメージは、「きれいに並んでいた予定が入れ替わったり、時間配分が変わってしまったりして、最初の形どおりには進まなくなっている」というものです。
予定表は、まさに「積み上げたブロック」のようなイメージなので、その形が変わるときに「崩れる」がしっくりきます。
ビジネスの場面では、
- 想定外の出来事により、スケジュールに大きな影響が出ております
- 状況の変化により、当初の計画を見直す必要が生じています
といったように、「崩れる」という言葉を使わなくても、同じような内容を少し落ち着いた言い方で伝えることもあります。

場面に合わせて、直接的な表現とやわらかい表現を選び分けるイメージです。
ルールや制度を「壊す」ときの強い表現と注意点
ルールや制度など、「しくみ」そのものがテーマになるときには、「壊す」という言葉が使われることもあります。
- その行動は、チームのルールを壊してしまいかねない
- 制度を壊すのではなく、より良い形に整えていくことが大切です
この場合の「壊す」は、そのままの形では成り立たなくなるほど、大きな影響を与えてしまう、という強いイメージを持っています。
「少し変える」というより、「本来の姿が保てないくらい大きく変えてしまう」というニュアンスです。
ビジネスメールやお知らせ文では、あまりに強い言葉は相手にきつく伝わってしまうこともあるため、
- ルールの目的を損なってしまう
- 制度の本来の意図から外れてしまう
といった、少しやわらかい言い回しにすることも多いです。
「壊す」という言葉を使うときは、その強さがふさわしい場面かどうか、少しだけ立ち止まって考えてみると安心です。
会話とビジネスメールでの壊す・崩すの自然な使い分け
ここまで見てきたように、「壊す」と「崩す」には、それぞれ独自のイメージがありますが、実際に使う場面では、日常の会話とビジネスメールでは、少し言い方を変えたほうが伝わりやすいこともあるので、この違いについて整理しておきます。
日常会話での「壊す」「崩す」とやさしい言いかえ表現
日常の会話では、「壊す」「崩す」をそのまま使ってもかまいません。
- 最近ちょっと体調崩しちゃって
- 急な用事が入って、今日のスケジュールが崩れたんだよね
といった言い方は、ごく自然に聞こえると思います。
ただ、相手を心配させすぎたくないときや、少しやわらかく伝えたいときは、別の表現に言いかえることもできます。
- 最近ちょっと体調がよくなくて
- 急な用事が入って、今日の予定がだいぶ変わっちゃった
このように、「壊す」「崩す」という言葉を使わなくても、状況をやさしく伝えることができます。
相手がどんな人か、どのくらい深刻さを伝えたいかによって、言葉の強さを調整してみると、より気持ちに寄り添った言い方になります。
ビジネスメールでは中立的に伝える言い方の工夫
ビジネスメールやお知らせ文では、「壊す」「崩す」という言葉が少し感情的に聞こえる場合もあるため、事実を中立的に伝える表現を選ぶことが多くなります。
たとえば、体調について書くときは、
- ご多忙が続いているようですが、どうかご無理なさらないでください
- 最近とてもお忙しいとお聞きし、お体のことを案じております
といったように、相手を気づかう気持ちを含めてやわらかく伝えます。
予定や計画については、
- 想定外のトラブルにより、当初の計画に変更が生じております
- 今回の件により、プロジェクト全体のスケジュールに影響が出ております
と書くことで、「崩れる」という言葉を使わずに、状況の変化を落ち着いて伝えることができます。
ビジネスの場では、「壊す」「崩す」をそのまま使うよりも、「変更が生じる」「影響が出る」「見直しが必要になる」といった表現のほうが、読み手にとって受け取りやすいことが多いです。
迷ったときの目安|ダメにするなら壊す・バランスなら崩す
ここまでの内容を踏まえて、最後にシンプルな目安をまとめておきます。どちらの言葉を使うか迷ったときは、次のように考えてみてください。
- 元どおりに使うのがむずかしいほどダメにしてしまう → 壊す
- 整っていた形やバランスがくずれてしまう → 崩す
この目安をもとに
- 物や機械、家電、制度のように「しくみ」や「機能」が大事なものには「壊す」
- 体調、生活リズム、予定、積み木、お金など、バランスや積み重ねが大事なものには「崩す」
というイメージで考えると、自然な使い分けに近づいていきます。
完全に正解を暗記しようとするより、「どんな状態の変化を話しているのか」に目を向けると、自分なりにしっくりくる言い方を選びやすくなります。
壊すと崩すに関するQ&A(FAQ)

最後に、「壊す」と「崩す」について、よく浮かびやすい疑問をコンパクトにまとめました。
Q. 「体調を壊す」と「体調を崩す」はどちらが自然ですか?
A. ふだんは「体調を崩す」のほうが自然でよく使われます。「体調を壊す」は少し重く聞こえることがあるので、無理が続いて本格的に体を悪くしてしまったような場面にしぼって使うと、ニュアンスの違いが出しやすくなります。
Q. 「積み木を壊す」「積み木を崩す」はどちらも使えますか?
A. どちらも通じますが、「積み木を崩す」がより一般的で自然です。積み木は「積み上がった形」が大事なので、その形をくずすときには「崩す」を選ぶと、伝わり方もイメージしやすくなります。
Q. 計画やスケジュールに「壊れる」は使ってもいいですか?
A. 「壊れる」と言っても意味は分かりますが、日本語としては少し不自然に感じる人が多い表現です。「計画が崩れた」「予定が狂った」「スケジュールに影響が出た」などと言いかえるほうが、会話でもビジネスでも受け取りやすくなります。
Q. 子どもに壊すと崩すの違いを説明するときのコツはありますか?
A. ロボットのおもちゃのように「動かなくなるもの」は壊れる、積み木の塔のように「形がくずれても材料は残るもの」は崩れる、と実物を見せながら説明すると分かりやすくなります。日常の中で「これは壊れたね」「これは崩れたね」と少しずつ声をかけていくと、自然と感覚として身についていきます。
まとめ|「壊す」と「崩す」のイメージをおさえて自然に使い分けよう
ここまで見てきたように、「壊す」と「崩す」はどちらも「元の状態とは違う状態になる」ことを表しますが、その中身には少し違ったイメージがあります。
ざっくりまとめると、
壊す=中身やしくみ・機能をダメにしてしまう
崩す=整っていた形やバランスをくずしてしまう
という違いがありました。
物や機械、家電、制度など、「きちんと動くこと」「役割を果たすこと」が大事なものには「壊す」がよく合います。一方で、積み木の塔や山、プリン、体調や生活リズム、貯金、予定や計画のように、「積み重ね」や「バランス」がポイントになるものには「崩す」がしっくりくる場面が多くなります。
また、同じように見える表現でも、
体調を崩す → 日常会話でよく使われる、やわらかい言い方
体を壊す → 無理をしすぎて、大きく体を悪くしてしまったような重い印象
のように、選ぶ言葉によって受け取る側の印象も変わります。ビジネスメールやお知らせ文では、「壊す」「崩す」をそのまま使うよりも、「影響が出る」「変更が生じる」「見直しが必要になる」といった中立的な言い方に言いかえることで、落ち着いた印象にすることもできます。
完璧に覚えようとしなくても、
元どおりに使えないくらいダメになったら「壊す」
形やバランスがくずれたら「崩す」
という目安を頭のすみに置いておくだけでも、ことば選びはぐっと楽になります。
文章を書くときや、誰かに状況を説明するときに、「これはしくみがダメになった話かな?」「それともバランスが乱れた話かな?」と一度立ち止まってみると、自分が伝えたいイメージに合った言い方を選びやすくなります。
この記事を参考に「壊す」と「崩す」の使い分けが、自然な感覚として身についていくとうれしいです。